学習院初等科

 教育目標  
真実を見分け、自分の考えを持つ子ども

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子どもたちの発想から始まる算数の授業は
数学的な考え方を育てる

2019年1月18日、学習院初等科の算数科の授業を見学した。
2年生の長谷川寿美先生の授業では正方形の紙を同じ大きさに2つに分ける学習をしていた。授業の後半には16分割にマス目を引いた正方形を1/2に分けようと子どもたちの手は忙しく動く。
6年生の諸戸加織先生の授業では体育の授業で行ったボール投げの到達距離の数値を分析していた。傾向を調べるための方法を話し合い、柱状グラフを作っていた。見学を終えて、先生方にお話を聞いた。

諸戸加織先生(左)、長谷川寿美先生(右)

考え、話し合いながら進む授業

――授業中の子どもたちの活発な発言に驚きました。

諸戸 子どもたちが自分で考えたことを発言し、それに対してみんなが意見を出して話し合いながら授業が進む場面は、初等科の様々な教科で見られます。今日の私の授業で言えば、教科書にある「ボール投げの記録とそのまとめ方」の課題を、初等科6年生2クラスの遠投記録を比較するという自分たちの資料を使って学習しました。教科書には、資料を整理する手法が示されていますが、授業では、この記録をどう分析しましょうかとアプローチしました。自分たちの記録を取り上げることで子どもたちの興味は高くなります。子どもたちからは平均値を出そうとか、最高記録と最低記録で比べようとか提案が出て、それを試していきます。

子どもたちの分け方

長谷川 2年生の今日の授業は、折り紙を折って1/2の形を作るところまでは教科書通りなのですが、そこから発展させて、16マスの正方形の方眼紙を使い、その正方形の紙の1/2に色を塗っていきます。できた子どもは、自分で見つけた形を実物投影機でTVに写して1/2であることをクラスのみんなに説明します。じょうずに説明できないと、ほかの子どもが助け舟を出すようなこともあります。今日は、すぐに対角線を引いて三角形に分ける子がいたと思うと、右の図のように、合同な2つの台形になるように斜めに分割する子どもや、面積は等しいけれど形が違う2つの図形に分けた子どももいました。その図形がもとの正方形の1/2と言ってよいかについて活発に意見が交わされました。2年生の学習範囲以上のことですが、明日の授業で続きをします。1/2探しは授業時間内に終わりませんでしたので、きっと家で探してきてくれる子どもがいると思います。

諸戸 1年生のときから発言をしやすいように、まちがってもだいじょうぶと思える雰囲気を醸成します。ほかの人の意見を聞きながらみんなで解決する経験を積むと、算数の時間が自然に楽しみになると思います。同じ内容でも子どもたちの反応によってクラスごとに授業展開は異なってきます。今日の6年生の授業でも、あるクラスでは「散らばり具合が見たい」という意見が早々に出て、柱状グラフ作りに進んだのですが、今日のクラスでは「最高と最低を比べよう」ということになりました。ところが、その後でほかの人の記録も考えるべきだという意見が出て、では、すべての記録を整理して並べてみましょうということになりました。黒板にかいた数直線上に自分の記録を丸い磁石で貼っていくと、散らばりの様子が自然に見えてきて、柱状グラフにつながりました。

友達と説明し合う2年生

――「数学的な考え方をはぐくむ」というのはどういうことでしょうか。

長谷川 一つの事柄のなかから「きまり」を見つけてこの先どうなるだろうと予測をする、自分の持っている知識をもとに仕組みを考えていく、根拠に基づいて順序だてて論理的に説明する、そういったものが数学的な考え方と言ってよいと思います。コミュニケーションにおいては、自分が感じたことや思いついたこと、あるいは発見したことを、わかりやすく伝えなくてはなりません。それには、根拠をもって、説得力ある説明を行い、相手に理解してもらうこと。そして、相手の考えを自分も理解できることが必要です。数学的な考え方は将来、新しいものを生み出すときや他者とのコミュニケーションをとるときなど様々な場面で生かされます。

諸戸 数学的な考え方を育むために、初等科では子どもたちに知識を教え込むことはしません。子ども同士で図や式や言葉を使って、それまでに習ったことをもとに自ら考え、コミュニケーションをとりながら算数の世界を広げていく授業を心がけています。これが、初等科の教育目標である「真実を見分け自分の考えを持つ子ども」につながります。

――初等科で考える「基礎基本」とはどのようなことでしょうか。

諸戸 1年生の最初は、数字の書き方練習を行います。漢字の練習と同じように、書き順を守り、点線をなぞって、正確な数字の書き方を覚えます。授業で学んだことをノートにまとめる場合も、ていねいに美しい字を書くように指導します。さらに、低学年では、並べる、つなげる、重ねるなど、手を使う操作性の高い活動をたくさん行います。これは、子どもたちが大好きな学習です。高学年になると、定規やコンパスを使って高度な図形を描きます。正確できれいな図形を描くと、組み合わせてできた図形の美しさに感動できたり、新しい「きまり」が見えてきたりすることもあります。

長谷川 算数の基礎基本というと、計算ができる、図形が描ける、公式を使って解くことができるというようにとらえられがちですが、それだけではありません。初等科では、単に問題を解くのではなく、まず、式の共通性や図形と図形の関係性を探し、そこに「きまり」があるのではないかと考えます。また、今までに学習したことを振り返って、同じ式が利用できることを発見したりします。ただ公式を覚えるのではなく、様々な考えを一つにまとめて公式を作り出します。こうした経験の中で身に付けた考え方が次の問題を解くときの道具になります。そのような道具を次々と身に付け、必要があったらそれを取り出して使う力を付けることも算数科の基礎基本のひとつです。

校内の食堂でいただく給食

コンピューター室での
4年生の授業

協力し合って進む算数の学び

自分の考えを伝える6年生

おとなも楽しみたい算数の喜び

――算数に関してご家庭でフォローしていただきたいことはありますか。

諸戸 保護者の方にも、子どもたちがどのような学習をしているのか、関心を持っていただけるといいと思います。日記などに、子どもが家で算数の話をしたと書いて来ることがありますが、ご家庭でも話題にしてくださったのだと嬉しく思います。

長谷川 子どもたちは、授業のなかで、算数のもつおもしろさ、楽しさ、美しさなどと出会い、驚きや喜びをたくさん感じています。例えば、円周上の等間隔に0から9までの点を打って、九九のそれぞれの段の答えの一の位をつないでいくと、きれいな模様ができます。これは、九九の持つ「ひみつ」のひとつですが、このようなそれぞれの段の特徴や法則を探りながら九九を構成していくとき、九九は単に暗記するものではなく、理解するものとなります。ぜひ、ご家庭で算数の授業を話題にして、一緒に驚いたり、楽しんだりしていただきたいです。

さくらの授業で凧揚げをする2年生

諸戸 初等科にいる間は、「どうして?」「どうやって?」と考え、議論して、試してみて、という工程を経て結果にたどり着く楽しさをたっぷり味わってほしいと思っています。ご家庭でも、早く答えを出すことだけを求めるのでなく、じっくりていねいに取り組むことを大切にしていただきたいと思います。そのような学習に対する姿勢は、中学生になっても必ず役立ちます。

長谷川 自分で疑問をもって、仕組みまで深く理解できると、子どもたちは、わかる喜びやできる喜びを感じることができます。ご家庭では、そうした子どもたちの「どうして?」から「わかった!」までの流れを言葉で表現させ、聞いてあげてほしいと思います。子どもたちが、「今日も楽しかった!」と終わる毎日でありたいと願い、子どもたちが楽しく学べる授業を心がけています。

School Data
設立年 1877年
学制 共学(男女比1:1)
系列校 学習院大学、女子大学、中等科、高等科、女子中・高等科、幼稚園
児童数 1学年136名(34名×4クラス)
教職員数 常勤40名、非常勤8名
授業日 週5日制
学期 3学期制
昼食 給食/月1回お弁当の日
初年度費用 1,532,000円(2018年度)
進路 ほとんどの児童が学習院中等科・学習院女子中等科に進学
学校説明会 2019年5月18日(土)
入試説明会 2019年9月7日(土)

※上記は2019年5月時点(冊子「スクールダイヤモンド2019年春号」)での情報です。
最新情報は各校のホームページ等でご確認ください。

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