授業に必携三点セット

　教科書、ノート、タブレットの三点セットはすべての授業で欠かせない。子どもたちは学校がセキュリティ管理を行うタブレットをひとり1台6年間貸与されている。

　2020年度はオンラインで家庭と学校がつながることから始まり、5月からは時間割りどおりのオンライン授業を行った。先生や友だちと心を通わせる時間の共有を重視して、おしゃべりタイムやオンラインクイズ大会などの遊びの時間も設けた。

「6年生では共同閲覧のページを開放したこともあります。不適切な利用をするかもしれない危惧もありましたが、学校や家庭がしっかり見守ったこともあり、子どもたち自身が節度を守り合って上手に活用するようになったと思います」と6年生担任の綿引啓友先生は言う。

　2学期に入ると、三点セットの授業は軌道に乗った。授業中にノートを取らなくてもタブレットで振り返りを行うが、感じたことや気づき、スケッチなどはノートに書き留めるというように使い分けている。

「6年生の算数の授業で『木の高さを三角形の縮図で測定する』問題を出したら、木の下に立たせた友だちを写真で撮り、画面上で友だちをコピーしてタテに積み上げて高さを求めるという、こちらの想定外の方法であっさりと答を出した子がいました。教科書の解法とは違うものがあってよいと改めて子どもから気づかされました。また、旅人算も子どもがプログラミングして視覚的にわかりやすく説明してくれたこともありました」。

　プログラムを考えた友だちから教わったことで、子どもたちの意欲はますます高まった。

調べて体験するSDGs学習

　啓明学園には「日本だけでなく世界の子どもをも教育していく使命がある」（創立者三井高雄の言葉より）という1940年の創立以来の方針がある。現在、海外からの帰国や外国籍など、多様な言語や生活経験をもつ国際生と、日本育ちの子どもたちは多文化を尊重し合い、学び合っている。

　通じるものがあるので、総合学習の一つとして6年生はフランス映画『バベルの学校』を鑑賞した。世界20か国の11～15歳の子どもたちがパリの中学校の〝適応クラス〟で1年間を過ごす様子を描いたドキュメンタリーだ。「見終わると『啓明と同じだね』『国際学級はずっと前からあるよ』と口々に言い、帰国生の子は『すっごいこの子たちの気持ちわかる』と自分の体験を語りました。『国境はいらない』『性別なんて関係ない』と意見も出て、そこから『すべての人が自分らしく生きる』ことについて考える方向に向かったのです」。

　またコロナ禍の休校期間中、「家にいる時間を使って何でもいいからSDGsについて調べよう」と課題を出した。インターネットで調べているうちに興味が出てきたようなので、登校した時の授業でSDGsの17の目標を確認し、11チームに分かれて、そのうちのひとつを選んで互いにプレゼンテーションを行うことになった。課題設定・現状把握・改善策を調査研究したうえで、自分たちができるレベルのアクションを設定する。アクションはひとりひとりの実行宣言であり、翌週に振り返りも行った。

　たとえば、1日バケツ一杯分の生活用水しか使えない村の存在を知ったチームは、実際、家で実践を試みる。翌日の感想は「無理無理！生活できるわけがない！」。

「やってみたからこそ改めて自分たちにできることを考える視点をもてた。子どもたちが自ら体験し実感して、自分たちの未来に注目し続けてほしい」と綿引先生は願う。

　世界を視野に入れながら、自分で考える。考えたことは友だちと共有して、アクションにつなげる。2020年の体験はこれからの子どもたちの飛躍に結び付いている。