田んぼと畑と果樹林と

「専科で農園を担当しています」と自己紹介をする鈴木義哉先生は、体育と理科の教員だ。総合学習の時間には農園活動の指導をしている。２月のある日、鈴木先生に案内されて農園へ行ってみた。

　啓明学園のおよそ８万６６００㎡（約３万坪）の敷地はとにかく広い。正門を入って左右に並ぶ校舎の奥に日本庭園と東京都の文化財指定を受けた日本建築「北泉寮」、１・２年生の「森あそび」の場となる雑木林があり、その奥に小動物も生息する自然観察林が広がっている。校舎の西側にはグラウンドと体育館、さらに西の多摩川から引かれた昭和用水（立川堀）にかかる橋を渡ると、野球場、テニスコート、グラウンド、そして農園が奥へ奥へと並んでいる。

　農園には畑も田んぼもある。畑では、ダイコンが収穫を待っていた。６年生が育てたものだ。畑の畝は学年ごとになっていて、４年生は麦、３年生はサツマイモ、２年生はマメ類と、毎年ほぼ決まった作物をつくる。低学年には農園はかなり遠いので、校舎近くの花壇を畑に転用して、いつでも作物の世話ができるようにしている。２０１８年度はここで１年生がサトイモを、２年生がトマトとキュウリとトウモロコシをつくった。

　５年生は、農園の田んぼで米をつくる。春、もみを１㎏購入する。米は毎年20㎏前後を収穫するのだが、５年生が塩むすびにして食べるとほぼ消費してしまい、もみを残せないのだ。

　苗箱で種もみを発芽させ、苗を育てる。田起こし、水張り、代かきを経て、田植え。夏休みも見回り、収穫を迎える。稲刈り、天日干し、稲こき（脱穀）、精米とすべてのプロセスを子どもたちと教員が力を合わせて行う。作業小屋からせんばこき、回転脱穀機、もみ殻を飛ばす唐とう箕みなどの手動工具を出して使い、精米だけは電動精米機で行う。

　子どもたちはよく働く。なかでも稲こきは、割る前の割ばしに稲を挟んでこき落とすやり方で能率がよい。稲わらは燃やして肥料にする。米ぬかも肥料にする。落ち葉は集めて腐葉土をつくる。収穫に直接結びつかない農作業も積極的に行う。