感性の刺激が学ぶ力を引き出す

　啓明学園には２つの大きな特色がある。１つは手つかずの自然が広がる敷地。幼稚園から高校までの校舎の奥は自然のままの雑木林が広がる。自然の現象を体感する絶好の環境で、１・２年生には「森遊び」の時間、３年生には森の中にある歴史的建物「北泉寮」での宿泊体験がある。初めて接する生き物に興味をもち、何だろう、知りたいと思うところから、自ら学ぶ力が引き出される。

　もう１つの特色は帰国生や外国籍児童を受け入れる創立以来の方針。個人の母国語を尊重することを前提に、日本語の理解力に合わせた個別指導体制を用意しながら、日本育ちの子どもたちと学校生活を共にする。言葉が通じない子どもたちは、互いに助け合ってコミュニケーションを成立させていく。知識としてだけではなく、友達やその保護者と一緒に未知のものを受け入れ、異文化を尊重しながらグローバルな人間関係をつくりあげている。

心を解放する表現教科

「外国籍生や転校生に慣れているせいか、子どもたちは人と違うことを気にしません。４年生ごろになると他人と比較して自信をなくしたりするといわれますが、啓明の子どもたちはうまくできないからと投げ出すことはなく、へたでも気にせず、自分の内にあるものを表現することに真剣です」と話すのは、教務主任の岡田美佳先生。もともと図工科が専門だった岡田先生は、子どもたちの造形や色彩の感覚に驚かされるという。

「１年生は赤と黄色と紺色の３色で色混ぜの実験をしますが、実にさまざまな緑色をつくります。学園内の草木の色の印象がそれぞれ異なるからです。水たまりの色をつくるのも得意です。実際に雨上がりの水たまりで遊んだ体験があるので、強い思い入れがあるようです。図工専科の二人の先生が子どものこだわりを見逃さずに励ましてくれるので子どもたちは自信をもって創作に取り組んでいます」

　表現教科の体育、図工、音楽はみんなが大好きな教科だという。音楽の専科教員、佐々木康子先生も「歌うことは心を解放します。讃美歌を歌う機会も多いのですが、歌によって心が落ち着いて、授業に向かえるようです」という。