６年間の集大成

　６年生にとって、音楽発表会の練習に追われる時期は、受験勉強の追い込みと重なる。限られた時間を有意義に使って、休み時間は音楽発表会の練習に全力を注ぐ。校内のあちらこちらで、友だち同士互いに教え合ったり、下級生を指導したりする姿がある。十分な数の楽器が用意された環境と先生方の協力が後押しする。

「演奏の成功は全員の力を一つに合わせなくては成立しないことを子どもたちはよくわかっています。かつての自分も、６年生に導いてもらったことを思い起こして、ともに学び、自ら学ぶ大切さを実感するのでしょう」と大脇先生。

　また、大脇先生は授業だけでなく吹奏楽クラブや合唱部も担当している。指導に大忙しだが、「聴くことを大切にすること、あとは子どもたちに託してます」と言う。

　まず聴く。自分の音、友だちの音。友だちの言葉を聴く。そして友だちの心を思う。間違えた箇所があっても、ちょっと音が外れても、子どもたちはそれを受けとめて、できている子はできない子に教える。

「互いに学びあってきたプロセスがあるから、たとえ本番で失敗しても、だいじょうぶと励まし合うことができます」（大脇先生）。

　榎本先生は「それは音楽に限ったことではありません」と言う。算数でも理科でも、楽しい体験学習においても、互いのいいところ、直すべきことを、子どもたち同士で話し合い、教え合い、ときにぶつかり合いながら、授業や活動を自主的に進めていくという。

「音楽発表会の練習中、『できるかな』と心配になりながらも、自分から友だちに頼んで、練習を見てもらって得る成果は貴重です。精神的なものと技術的なものを両立させる音楽発表会が、子どもたちを一回りも二回りも成長させます」という榎本先生の言葉には、教育への思いがこもる。気持ちを込めて子どもたちと向き合うことに、子どもたちも応えている。