【インタビュー】

日高好生宝仙学園小学校校長)

新しい時代に求められる力とは?
このテーマを授業を通して表現したい。

――宝仙学園の母体である明王山宝仙寺の緑豊かな境内が背後にあります。

日高 宝仙寺は900年を超える古刹であり、学園は来年度 創立90周年になります。宝仙学園の教育の根幹は仏教の「慈悲の心」にあります。学園創立者冨田先生は、「宗教は、教え込むものではない。宗教はその環境の中で感じ取るもの(感応の精神)である。」と述べられております。宝仙小では、花まつり・弘法大師降誕会・創立者忌日法要・みたままつり・講堂朝礼など仏教的行事の中で合掌の意味を考えます。豊かな情操につながる道筋がここにあるともいえます。

 

――入学希望者が非常に多いとうかがいます。

日高  入試は内部入試(宝仙幼稚園)、推薦入試、一般入試と定員を3分の1ずつに割り振っているのですが、内部も推薦も希望者が増えています。一般入試に至っては一昨年は男子が7倍、女子が約4倍でした。補欠合格の可能性は非常に低く申し訳ない状況です。もう1クラス増やしたい思いは強いのですが、2クラスの学校なので教室を増やすことは難しいのです。徒歩7分の中野坂上駅は、東京メトロ丸の内線と都営地下鉄大江戸線が通っており、地の利がよいことも倍率に影響していると思います。

――難関中学への進学率は都内屈指です。

日高  入学前から親子二人三脚で、中学受験を目指しておられます。世の中を生きていくために、実力突破できる力をつけようというご家庭の方針ではないでしょうか。子どもたちの学習意欲も高いです。宝仙学園中学校(理数インター)も、開校11年になり、2017年は5人の内部進学がありました。

 進路決定は、保護者との面談を重ねながら行っていますが、子どもの個性を考えることも大切なことだと思います。

 小学校の学習は基礎を蓄え、その力を中高で伸ばしていかなければ意味がありません。低学年からの基礎基本の徹底は、学習に対する心構えを養うことにつながります。学習が自分のためにあることを自覚する。盤石な学習態度は、その後の人生を変えていきます。豊富な知識・教養を土台にしてこそICT・AI・外国語への対応が可能になります。短期的な中学受験に対応することが本題ではなく、卒業後にそれぞれが生き抜いていける力を身につけてほしいと考えています。

 

――公立小学校にも情報や英語の科目が導入されています。

日高  ICTやAIが小学校の教育にも登場する時代となり、これまでにない変化を感じます。新しい分野を私学としてどう取り込んでいくか、準備すべき課題です。進化が続くICTが、今後人間や社会に大きな役割や影響を持つことは確かです。

 将来的には3年生になると、子どもたちは各自1台のタブレットを専有し、卒業までその自分専用のもので授業に活用していきます。コンピュータ室のデスクトップは廃棄して、アクティブラーニング室に生まれ変わり、昇降式の机で、よりグループ学習しやすくします。6年生と理数インターの1・2年生とのコラボレーションも予定しています。早々と導入した電子黒板も、買い揃えたデスクトップも時代遅れになってしまいましたが、その時々に新しいものを取り入れて、変化に対応していくことは不可欠ですから、無駄だったわけではないと思っています。

 

――子どもたちは端末機器の操作が巧みです。

日高 子どもたちの年齢に比して機器の持つ能力が大きい。無防備に発信したり情報を共有する怖さがありますので、校内では注意深く見守っています。そのためもあって、タブレットを校内供与に限定しています。ゲームにひどくはまってしまうことも起こり得ることです。教員も子どもたちも、ICTと対峙し、自立し発展していく道を模索しなくてはならない時代です。

 教師はファシリテーターと位置付け、子どもたちが議論をしながら学んでいく過程を、見守り助言するまとめ役という授業も行っています。4年前から始めたことですが、その子どもたちが6年生になった時、確かな成長が見られたことで自信を深めています。

――先生方にも新しい分野の指導力が求められます。

日高 2016年度まで10年間にわたり本校の校長を務めてくださった和智紀朗先生は「私学は教員の移動がないから新しい風が入ってきにくい」と仰って、積極的に外部の研修を受けるように勧めてくださいました。ICTやコミュニケーション面の研修にはとりわけアンテナを高くして、外部の展示会や研修に参加したり、講師を招いて内部で研修を行っています。

 新しい時代の教育に取り組んでいくとき、広く世界を見る冷静な視点が求められます。歴史ある宝仙学園小学校の文化的・精神的バックボーンをつくり続けてまいります。

※上記は2018年1月時点(冊子「スクールダイヤモンド2018年新春号」)での情報です。
最新情報は各校のホームページ等でご確認ください。

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