【インタビュー】

和智紀朗宝仙学園小学校校長)

「居心地のよい学級が待っている」
そんな環境を整えて子どもたちの意欲を引き出し
教職員のチーム力によって高い学力に結びつけます

――初等教育でもっとも大切なことは何でしょうか。

和智 何といっても健康です。体がしっかりしていないと頭も働きません。それから、子どもには意欲をもたせることです。特に学校では、意欲をもたせられる日常でなければいけません。それには、子どもにとって居心地のよい学級であることです。一人ひとりの子どもが自己の存在を確かめ、認められほめられることで存在感と充実感を味わう。そういった環境でこそ、さまざまなことに意欲的に取り組む「生きる力」が身についていくのです。

 教員には「子どもたちは毎日学級に通ってくるのだから、そこが楽しい場所であることが大事」と常日頃伝えています。小学生時代は社会人としての基盤を築く非常に大切な時期です。その時期を元気に楽しく意欲的に過ごしてほしいと願っています。

――宝仙学園小学校が優れた中学進学を果たす秘密はどこにあるのでしょうか。

和智 教育の出発点は、児童理解です。それには教師のキャパシティの大きさが必要です。多様な子どもたちの個性を受け止められないようでは、子どもたちは失望します。特に私学の場合は、教師の存在は非常に重要です。社会性や豊かな人間性、そして高い専門性をもつ教師の存在が求められます。専門性は自分の柱となり自信となって、他の部分でも自分の成長を促してくれます。

和智校長の2015年の書き初め

――ご自身の柱となったものは何だったのですか。

和智 私は東京学芸大学の学生時代の半ばまでは技術科の中学教師をめざしていたのですが、小学校の教育実習で自分の適性にめざめ、都下の市立小学校から教員生活をスタートしました。以来体育教育の研究に注力して教員生活を送り、体を使って子どもたちに接してきました。48歳から12年間校長職を務めて退職し、その後宝仙学園小にご縁をいただきました。その間、専門とは言えませんが続けて来たのが書道です。

――スポーツも書も今もお続けなのですか。

和智 硬式テニスとスキーをやっています。また毎年、書き初めをして、それを児童に見せながら話をします。2015年は「生きる喜び」と書きました。「アンパンマンマーチ」の一節「そうだ うれしいんだ いきる よろこび」です。

 書は字そのものの美しさも大事ですが、「余白の美」が大切な要素であり、全体の雰囲気が大事です。たとえば「生きる喜び」は5つの文字が配置されますが、どれか一つが目立ってしまってはいけません。多少字が下手でも、バランスがうまくとれて軸がしっかりとしていれば全体感がすごくよくなります。

 これは、学校にも同じことが言えると私は思っています。一つひとつの文字のように、教員はそれぞれの個性や力量が違います。それでもバランスがとれていれば、学校全体としてはよい雰囲気が生まれます。これがチーム力です。全教員で全児童を見るという姿勢が「宝仙のチーム力」です。逆に一人ひとりがいくらすばらしくても、全体のバランスが崩れていたり、軸がぶれていると、まとまりがなくなるものです。

――親は学校や社会全体への協力よりわが子のことに目が行きがちです。

和智 親御さんにとってわが子がいちばん可愛いのは当たり前です。新入生の親御さんには必ず「わが子が可愛いなら、わが子をとりまく子どもたちも可愛いがってください」と申し上げています。親御さんと学級担任は決定的に立場が違います。親御さんは、わが子を通して学級や学校を見ますが、担任は逆です。学校・学級全体を一つの社会ととらえ、子ども一人ひとりの個性や長所を発揮できるようにすることが目標です。

 宮大工は「木を見て、山(森)を見ず」と戒めるそうです。これは一本一本の木の姿に目を奪われて、山や森全体の姿を見失ってはいけないという意味なのですが、教育にも通じる言葉です。「木も見て、森も見て」、子どもたち一人ひとりの個性が生き生きと躍動し、学校という森で響き合うことを願っています。

※上記は2015年5月時点(冊子「スクールダイヤモンド2015年春号」)での情報です。
最新情報は各校のホームページ等でご確認ください。

アーカイブ