【インタビュー】

下平孝富(学校法人佐藤栄学園 さとえ学園小学校校長)

小学校時代は多様な体験を重ね、学びの楽しさを知る時期。
可能性を広げる複合型教育と使える英語力の定着を目指す。

――体験型教育を実践されています。体験が子どもたちにもたらすものについてどうお考えですか?

下平 体験型教育は本校のすべての教育の原点です。子どもたちは「今日はどんな新しいことに出会えるだろう」とワクワクしながら登校してきます。「なぜ?」という興味をもって、それがわかることの楽しさを体験する。体験の中で、さまざまな発見や感動を積み重ね、それが知識の引き出しとして増えていく。体験を多く重ねて、学ぶ楽しさを知った子どもは、中学や高校でのハードな勉強においてもがんばることができます。本校が水族館やプラネタリウム、トラックのある天然芝・人工芝のグラウンドなど本格的な設備を備えているのは、常に本物に触れることで、体験の密度や深さが増すと考えるからです。むろん、体験は校内や近くの川でのザリガニ採りなどにとどまらず、5年生になれば京都・奈良の旅での町並み探検などへ広がっていきます。

 趣の異なる低学年棟と高学年棟の2つの建物の周辺はのどかな自然に恵まれています。広々とした空間の中で育つと、人は自然に明るく元気になれるものです。友だち同士の結びつきが強く、人間関係が穏やかなのは、環境が子どもたちの情緒面に大きな役割を果たしているからでしょう。敷地は違いますが近くにある栄東中学校に進学した卒業生がよく遊びにきます。小学校は楽しい思い出が詰まっているところなのです。

――複合型教育はどのような位置づけですか?

下平 体験型教育をさらに深めるのが複合型教育です。米国のハワード・ガードナーが提唱したMI(マルチプルインテリジェンス)理論を参考にしますと、私たち人間がもつ8つの知性のうち、言語的・絵画的・空間的・論理数学的・音楽的・身体運動的知性は8歳、遅くとも12歳までに意識的に教育することがよいといいます。それら6つの知性を刺激し、伸ばす手段が複合型教育の目指すところです。

 アフタースクールとして子どもたちの放課後生活を支える複合型教育は、本校がパイオニアです。学習系プログラムでは、教員が正課授業との連動を重視しつつ、より楽しく学ぶさまざまな工夫を凝らして展開しています。日本語を正しく学ぶ朗読劇、論理的思考力を養成する算数パズル、科学実験や右脳開発のための速読やピコ式そろばん、英語4技能を効率よく学ぶレプトンなど多岐にわたるプログラムが揃っています。情操教育系プログラムでは水泳、書道、バイオリン、絵画、造形、バレエ、空手など選択肢は豊富です。

明るく楽しい英語専門フロア

――21世紀を生き抜くための人材として、どのような力が必要だとお考えですか?

下平 小学校で身につけてほしいのは、思いやりの心、感謝の心、強い体とたくましい心、そして考えて工夫する姿勢です。こういった人間としての基礎を育てる教育は、小学校時代にしっかりと養っておかなければなりません。やがて心と身体に蓄えた力を、他人のために率先して使えるように導くのが真のエリート教育です。体験型教育も複合型教育も、そこを目標にして学習プランを立てています。

 付け加えますと、これからは英語を使う必要性を無視できません。使える英語の習得をめざし、1年生からフォニックス(英語の読み方学習法の一種)を導入した週3時間の少人数クラス授業を行っています。また、週3回、始業前の7時45分から30分間、英語専用フロアの図書室で外国人講師による読み聞かせやDVD上映を行っており、誰でも自由に参加できます。加えて複合型教育の英語を選択するならばかなり日常的に英語に触れるチャンスが多くなります。

――最後にさとえ学園小学校の子どもたちの望ましいイメージを教えてください。

下平 本校が子どもたちに望むことは何よりも健康で元気に登校し、自ら進んで学ぶ楽しさを享受しつつ、その置かれた環境に感謝をすることです。そして、いつか蓄えた力を社会に還元していく気持ちを醸成してもらうこと。ご家庭と共に子どもたちの成長を喜びながら見守っていきたいと思います。

※上記は2017年5月時点(冊子「スクールダイヤモンド2017年春号」)での情報です。
最新情報は各校のホームページ等でご確認ください。

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