声に出して英語を使おう

　同校では、１.５年生までは週２時間、６年生は週３時間と、６年間で公立校の３倍の英語授業を行う。授業は１人ないし２人の担任制で、週１回は必ずネイティブ講師が入る。１・２年生は音声重視で、英語のインプットを行い、３・４年生は話す活動に主力を置く。ペアワークを取り入れ、フォニックスも利用する。4年生になるとアウトプット活動で学校の外へ出る。２０１７年は浅草で、子どもたちが外国人に英語でインタビューを行った。好意的な人が多く、計１００人以上に取材ができた。事前に設問と外国人の回答予想を立てておき、インタビュー結果と突き合わせて検証するなど、外国人理解を深める学習にもなった。

「言語を習得しようとする動機は、人とのつながりを持ちたいと思うことからだと、私は確信しています。英語は人とつながるツール。小学校では、それを体験してほしい。だから『話してごらん』からスタートです。アウトプット効果は大きく、子どもたちが英語の時間を楽しんでいると感じます」と奥山先生。

　英語学習用のロボット「ＭＵＳＩＯ（ミュージオ）」も導入した。子どもたちの投げかける言葉にリアルに対応し、聞き取れないとリピートを促すロボットのおかげで、子どもたちは楽しみながら会話をしている。

　６年生になると明星中学校・高等学校の英語教員も指導に入る。物語を読み進めながら読解力、作文力、文法力をつけ、中学校からの英語学習に備える。　指導体制は奥山先生を含め日本人３人、英語ネイティブ３人に、中・高の教員が加わり８人。原則２人で授業を行うが、１年生は週２時間ともネイティブ教員が担当する。

凝念は体づくりから

　味形修校長は「急激に変化する時代に、自分で判断して生き抜く力は必須ですが、新しい見方を取り入れる必要は英語やＩＴばかりではありません。変わらないものを残すうえでも、実情に適応した実践が必要です。礼法として定着している『凝念（ぎょうねん）』も、新しい観点から見直しを行っています」と語る。

　凝念は、創立者児玉九十先生が、成蹊奉職中に得た中村春二先生の教育法を継承したもので、腰かけて背筋を伸ばし、両手を前に合わせて黙想する。

「各授業の前後に凝念を行うことで、集中して静かな環境で自分と向き合うことができ、気持ちを切り替えて次の行動にスムーズに入ることができます。姿勢を正しくすることは大きなポイントで、それによって集中力、持続力が高まります」と味形校長は考察する。姿勢を正しく維持するためには背筋腹筋が強くなくてはならず、体育の授業と連携して、感覚と体幹のバランスをよくすることに力を入れている。心と体が響き合ってはじめて凝念は実を結ぶ。ここに明星学苑開学94年にして、伝統を大切にしながらも進化を続ける新しい教育があるようだ。