時間をかけて「星野の基礎」を身につける

「教育は時間に比例するものです。本校では小学校から高校卒業までの12年間は子どもが人としての基礎をつくる時期ととらえています。子どもはひとり残らず異なる可能性を持っています。成長の度合は違っても、まじめに取り組み、基礎を培っていけば、みんな立派に成長します」（星野校長）。

　星野学園はこの言葉通りの教育を実践してきた。「星野の基礎」とは、個人の多様性を尊重する視点と、何が真理で正義かを日常の経験のなかで繰り返し考えること。「学校では、ひとりとして特別な子どもはいません」と明言し、どの子にも公平に真っ直ぐに向き合う。子ども同士がぶつかった時も、教員が腰の引けた対応をすることはけっしてない。仲直りで友情が深まるように解決を図る。失敗をした子どもがいれば、校長も一緒にあやまってくれる。許してもらえないのはお詫びが足りないと考える。学校のこの姿勢に保護者の信頼も厚い。「あやまちをあらためざるはあやまち」は、今では星野学園の児童・生徒の合言葉であり、卒業してからも生涯役立つ宝物だ。

脈々と受け継ぐリベラル・アーツ教育

　小・中・高ワンキャンパスの強みを活かした人材と設備の学習環境があり、教育の第１の柱に掲げる情操教育は、多彩な取り組みをする音楽や体育、自立の完成をめざす宿泊行事など充実している。ハーモニーホールに一流芸術家を招く芸術鑑賞も例年のことだ。

　第２の柱、学力養成教育は4年生までの二人担任制やチームティーチングで小・中・高12年間を見通した指導を行う。第３の柱である英語教育はネイティブ教員と専科教員が日本文化を学び異文化を学ぶことで世界に目を開く独自教育を進める。

「創立者星野りちは、よき人格を育成するリベラルアーツ教育のためにこの地に開学しました。即戦力を期待する教育ばかりではなく、教養をしっかりつくりあげる教育が重要です。学びは人が成長する限り続きます。そのために『星野の基礎』が支えになるはずです」

　こう語る星野校長のところには毎年卒業生からたくさんの便りが届く。２０１７年の一通には、病気で出席日数ぎりぎりの卒業だったが、その後、回復、就労した卒業生からの手紙もあった。卒業後10年間志を持ち続け、国立大学進学を果たした、という内容だった。星野校長の熱い思いは、在校生、卒業生のなかにも息づいている。