少子化の日本
未来を支える子どもたちのために

首都圏において、小学校受験の志願者が増加している。また、ここ数年の特徴として共働き家庭の子どもが受験するケースも増えているという。ここでは、公立小学校と私立小学校それぞれの特徴と現状、子どもが小学校に進学するにあたって考慮すべき点について考えていく。
日本における人口減少は今後も加速

 日本では少子高齢化が加速している。国立社会保障・人口問題研究所が2023年4月26日に公表した「日本の将来推計人口」によると、2056年には日本の総人口が1億人の大台を割り、2070年には8700万人にまで減少するという。この少子化を受けて全国の小中学校の児童・生徒数も減少の一途をたどっており、学校の統廃合が進んでいる。政府では「こども未来戦略」 として、こども・子育て政策を推進しているが、日本の未来を支える人材でもある子どもたちを育てていく・育てられる環境の整備が急務となっている。

私立小学校の受験者数は年々増加傾向

 そんな中、近年になって都心部を中心に小学校受験の熱が高まっている。教育図書21が行った首都圏の私立小学校60校への調査によると、2023年度入学の応募者は過去5年で最多の2万3033人〈表1〉となった。この要因としては、少子化により子どもにかけられる教育費が増加したこと、共働きの増加により経済的に私立に通わせることのできる家庭が増えたことなどがあげられる。また、コロナ禍において全国の大半の学校が休校となった際、私立の学校がいち早くオンライン授業に対応したことなども影響したといわれている。

 さて、ここで公立小学校と私立小学校の特徴についてみていこう。〈表2〉を見ると、費用の差が大きいことは一目瞭然だが、環境面などにも違いがあることがわかるだろう。

 まず、公立小学校の一番の特徴といえるのは、授業料や入学金、教科書費が無償だということ。また、給食費を無償にしている自治体もある。次に学習面だが、公立小学校では各市区町村の教育委員会が採択した教科書が使用される。つまり、所轄区域が同じ小学校では同一の教科書が使用される。さらに学校教育法施行規則において、教科等ごと、学年ごとに標準授業時数が定められているため、自ずと学習内容も均質化されることになる。

 次に私立小学校入学の一番の利点といえるのが、学区などに左右されずに進学先を選べること。もちろん、入学するには原則受験に合格し、入学金も支払う必要があるが、進学先を自由に選べるというのは大きな違いだろう。また、小中高一貫校の場合は、受験をせずに中学・高校へと進学することも可能だ。

 以前は、私立小学校を受験するには「子どもの教育に手をかけられる専業主婦家庭が有利」だといわれていた。しかし現在では、私立小学校に通う子どもを持つ家庭の多くが共働きとなっている。その背景には、民間運営を含めた学童保育が年々充実してきていることなどがあげられる〈表3・表4〉。また、共働き家庭の増加を受け、給食の提供や学童(アフタースクール)を併設する私立小学校も増えてきている。このように、共働きの家庭でも私立小学校に子どもを通わせやすい環境が整ってきているといえる。

受験する前に調べておくべきこと

 私立小学校には創立者の「建学の精神」に基づいた「教育理念」があり、その理念に基づいた教育が実践されている。教育理念は各校を運営する上での根本であり、それぞれの文化や価値観を形成しているともいえる。当然ながら、そこに通う児童(家庭)は皆、同じ価値観を共有することになる。「建学の精神」や「教育理念」は各校のホームページに掲載されているため、学校選びの際には条件面とともにチェックしておきたい。

 また、オープンスクールや見学会を開催している学校も多いため、事前に訪れてみることをお勧めする。資料だけでは感じられない各校独自の空気感を体験でき、子ども自身も受験の前に自分が通うイメージを思い描くことができるだろう。

 先にも述べたが、公立校は国や自治体の教育委員会の監督下にあるため、教育内容が画一的になりがちである。その点、私立小学校は、宗教教育、英才教育、人格教育を取り入れたりと、バラエティに富んでいる。もちろん、私立小学校も学校教育法第一条に定められる教育機関であるため、文部科学省が公示する学習指導要領に基づいて教育課程が編成されるが、それぞれ独自のシステムやカリキュラムを採用している学校が多い。例えば、1年生からICT教育や英語の授業を行う学校も多く、日本の伝統文化を取り入れることで作法を学べる学校などもある。また、多くの私立小学校では教科担任制が採用されているため、各教科において質の高い授業を受けることが期待できる。

一貫校の特徴

 昨今は中学受験が加熱していることもあり、中学受験を回避する目的で一貫校へ子どもを入学させる家庭もある。私立中学の多くは中高一貫校となっており、内部進学により受験をせずに系列校に進学できる。また、中学・高校の6年間の学習範囲を高2までに終わらせ、高3の1年間で大学受験対策を行う学校もある。つまり、小学校を併設する一貫校に進学することで中学・高校受験を回避し、大学受験の負担を減らすことも可能というわけだ。

 一貫校の中には小・中・高の12年間を3つのステージに区分した4・4・4制を採用している学校もある。これは、児童・生徒の成長段階に合わせて柔軟なステージ別けと教育をして、個性や能力を伸ばすという考え方によるもので、一貫校ならではの特徴といえる。

進学先を決める際に大切となる考え方

 子どもの基本的な人格は3歳から10歳(小学4年生)くらいまでに形成されるといわれており、小学校はその貴重な時期に6年間学ぶ(過ごす)場所となる。また、小学校へ進学するにあたり子どもの意向を汲むことはできるが、最終的に進学(受験)する学校を決めるのは保護者である。その際の判断材料には前述した特徴や中学受験をするか否かなどがあるが、小学校での経験がその後の人生に大きな影響を与えることも鑑み、「どのような環境で」「どんな子ども達と」「どんな先生方に囲まれて」日々を送るかについて、保護者目線での希望やイメージだけでなく、当事者である子どもの立場・目線で判断することが重要だ。そのためにまずは、各校の情報をしっかりと入手し、校風や教育内容、学校行事なども考慮したうえで、自分の子どもに合った進学先がどこなのかを検討したい。

 冒頭で述べたが、少子化により日本の人口はこれから数十年にわたって減少していくことが予想されている。また、ICT化のさらなる進展により、職場・雇用環境も大きく変わっていく。子どもの小学校受験については、そのような時代背景も考えながら判断したいところだ。

冊子「スクールダイヤモンド2024年」より