今、期待される女子校の教育

 私立小学校の多くは男女共学である。この男女共学化の流れのなかでも、小学校から中学・高校まで一貫して女子だけの教育に取り組んでいる学校もある。女子小学校では、小学校から中学・高校まで一貫して女子のみで学びを追求する。

 現代は女性に知性だけではなく、社会で能動的に活躍する力が求められている。

「女子教育は、今の時代、改めて存在意義が大きくなっている」と言う聖心女子学院初等科・中等科・高等科の大山江理子校長に女子教育の意義について話を聞いた。

思春期をのびのびと

 女子校で教育を受けることによって、のびのびと自分らしさを発揮しやすい面があると思います。小・中・高12年間を学んだ高校3年生は、一人の人間として、自分をまっすぐに受け止めている印象を受けます。生徒たちから、枠にとらわれずに自分を見つめることができた、友だちと交わることで自分はこういうものだと率直に受け止められた、という感想を多く聞きます。

 創立112年の学院として、伝統的に女子教育を行ってきたなかで感じるのは、女子の成長に即した教育のよさです。近年は、小学校の高学年で心身とも目に見えて成長し、思春期を迎えます。女子の成長は男子より早いので、とくにこの時期は別学の意味が大きいように思います。ですから、4・4・4制は女子校で力を発揮します。

 聖心女子学院では小・中・高の12年間に、4・4・4の区切りを設け、それぞれをファースト、セカンド、サードのステージと呼びます。教育課程は6・3・3に準拠していますが、授業や行事の一部はステージの枠組みで行います。

 小・中をまたぐセカンドステージ(5.8年生)は、同じ校舎で学び、授業時間も50分と5分長くなります。身近に上級生を見る影響は大きいようです。

自分から動く

 初等科では年間を通して行事が多く、活動することはたくさんあります。みんなが動かないと何も進みません。1年生のときから誰もが、「自主的に動く」ということを言われなくても身につけて成長していきます。いつの間にか何でも自分たちでやるという意識が高くなり、学年をまたいだ関わりも深まるようです。

「自分から動かなくては何事も始まらない」とみんなで取り組むのは、授業の進行でも同じです。行き詰まっている様子を見かねて教師が助言しかけると、「待ってください、私たちは今考えているんです」と言われてしまったと話すほど、頼もしい子どもたちです。たくさんの活動を通してお互いに学び合っているのです。

 そして、自分のためだけに生きるのではなく、自分の力を人のために使うことを学びます。さらに自分を大切にしてこそ、人のために役立てることを知っていきます。卒業後も、自分にできることを、人との関わりのなかで生かしてほしい。人とともに何かを築いていってほしいと願っています。

■私立女子小学校

●宮城県
仙台白百合学園小学校 仙台市泉区紫山1丁目2-1

●千葉県
国府台女子学院小学部 市川市菅野3丁目24-1

●神奈川県
湘南白百合学園小学校 藤沢市片瀬海岸2-2-30
横浜雙葉小学校 横浜市中区山手町226番地

●東京都
白百合学園小学校 千代田区九段北2-4-1
聖心女子学院初等科 港区白金4-11-1
東洋英和女学院小学部 港区六本木5-6-14
雙葉小学校 千代田区六番町14-1
川村小学校 豊島区目白2-22-3
日本女子大学附属豊明小学校 文京区目白台1丁目16-7
光塩女子学院初等科 杉並区高円寺南2-33-28
田園調布雙葉小学校 世田谷区玉川田園調布1-20-9
東京女学館小学校 渋谷区広尾3丁目7番16号
立教女学院小学校 杉並区久我山4丁目29-60

■私立男子小学校

●東京都
暁星小学校 千代田区富士見1-1-13
立教小学校 豊島区西池袋3丁目36-26

「スクールダイヤモンド」調べ

冊子「スクールダイヤモンド2020年春号」より