保護者と学校の信頼関係と日常の協力が、
正しく強くやり抜く子どもを育てる

子どもにとって生活の第一の基盤は家庭であり、第二は学校である。
子どもたちがよろこんで行きたくなる楽しい小学校にするのは、
学校の努力だけでは成し得ない。保護者も学校とともに、
子どもたちのよりよい環境づくりに協力することが不可欠だ。

保護者の理解が信頼関係を安定させる

信頼のベースは学校の理念

 私立小学校は独自の教育理念と伝統に基づいて児童教育を推進している。私立小学校が公立小学校と大きく違うのは、この点だ。逆にいえば、保護者が教育理念に共感して、そのように子どもを育てたいと考えているからこそ、その私立小学校を選択しているわけで、この点での食い違いは本来起こらないはずだ。保護者が学校と共有する最大のものはその教育理念であり、それによって信頼関係が成り立つと考えられる。

 学校によって異なるが、学園全体および小学校において、理念、方針、目標などが立てられている。学校案内やホームページ、あるいは創立者の著作から学校の持つ哲学や歴史を知ることができるだろう。校名の知名度や進学実績は校史の上に成り立っているものなのである。校長先生の言葉や具体的な教育目標を理解するうえで役に立つと思われる。学校の方針がほんとうに自分たち家族にふさわしいかどうかを検討するためにも欠かせない。

 私立小学校の中にはキリスト教や仏教を基盤とする学校も少なくないが、いずれも信仰の自由を尊重しており、家族の宗教的帰属が入試に影響することはない。実際キリスト教系の学校に寺院の子弟が在籍していることも、またその逆もめずらしくない。ただ、子どもたちは、日ごろ校内で標語を目にしたり、唱和する機会、あるいは先生から講話を聞くことも多いので、保護者はわが子がそうした価値観の下で学校生活を送っていることに留意して、家庭の方針と矛盾が生じないように気を付ける必要があるかもしれない。

大切なのはすべての子どもたち

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 小学校に入ると、子どもは幼稚園時代よりずっと強く集団生活での協調性が必要になる。また学習する中で得意不得意の差を認識し、思い通りにならないことがあることもわかってくる。教員の指導の下で、子どもは柔軟に集団に適応していくが、むしろ保護者のほうはなかなか幼い子どもという見方から離れるのが難しいようだ。

 集団の中のひとりとしてわが子を見ようとしても、優れたところがあればそれを特別に伸ばしてほしい、足りないところがあれば特別に指導してほしいと思ってしまう。親にしてみればわが子を最優先で考えるのは当たり前といえば当たり前だが、やはり小学校全体で教育をとらえる視点も必要とされるであろう。

 私立小学校では公立小学校に比べると児童数に対する教員数が多く、眼が行き届いている。指導は子どもたち全員に公平に配慮されていることに信頼を寄せることが、結局はわが子のためになるのではないだろうか。児童・生徒の「学習意欲」について調査研究を行ったレポートによると、9割以上の小学生が授業によく参加できているときや先生にほめられたときに「やる気になる」と答えている。(表1

 また、「仲のよい友だちができたとき」も同じように意欲的になるようだ。子どもにとって友だちは大切な存在だ。わが子が友だちを大切にするように、保護者も子どもの友だちを大切にし、学校全体に愛情をもって向き合うことによって、子どもを取り巻く人間関係に信頼の絆を強めることができる。子どもの友だち、そしてその保護者とも信頼関係を結ぶことは、よき保護者としての重要なポイントではないだろうか。

保護者の協力が学校生活をスムーズにする

生活習慣の獲得

「学習する姿勢ができていること」はおよそ教える側に立つ教員なら大学においてさえ願うところだが、その中では私立小学校の児童は十分にその条件を備えているのではないだろうか。

 入試トレーニングを積んで入学した私立小学校の児童は積極性、協調性、集中力などに優れているが、それでも、先生の言葉を理解して授業に参加していくためには、幼稚園までより長時間の落ち着きと集中力が求められる。

 十分な睡眠、定時の起床、落ち着いてとる朝食という、子どもの健全性を守る要素は100%保護者の努力に頼っている。登校して元気に授業を受ける準備として欠かせない保護者の協力だ。

 また身の回りのことをひとりでできるようにしておくことや、家庭でのお手伝いの分担なども毎日の生活を規則的に送るために役立つ。こうした生活上の能力が、学校での昼食や清掃の時間、学年縦断の協同作業などを円滑に進めることに役立ち、リーダーシップを培っていく。

学習の習慣化

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 学校によって宿題を出す出さないは方針が分かれるようだが、授業を受けるだけではなく自主的に学習す保護者の協力が学校生活をスムーズにするる習慣を付けることはいずれの学校も重視している。文部科学省の調査によると全般に小学生の学校外学習(家庭・塾・家庭教師)の時間は長くなっているようだ。休日の学習時間は平日より長い傾向も見える。(図1・2

 低学年では家庭学習を保護者が見守り、宿題をやり忘れていないか保護者が確認することも必要だろう。高学年では休日の学習環境にも配慮したほうがいいようだ。

 私立小学校ではこれまでも放課後に補講時間を設けて、授業で十分理解できなかった箇所を児童に個別に指導したりする努力をしているが、最近は学校内にアフタースクールを設けて、補講や自習時間をサポートする学校が増えている。いずれにしても低学年から学習習慣を付けることは、学習量が増える高学年やさらにその先の学習の備えにつながる。

子どもと会話

 子どもには学校であったこと、友だちのことなど話したいことがたくさんある。話に耳を傾けて子どもを理解することはもちろん、子どものコミュニケーション力を付けることにも役立つ。

 こうして家庭に帰って話すことで、子どもは学校での経験が明確に印象付けられ定着するので、保護者はそれを次の経験への期待につなげてやることもできる。前出の表1を見ても、いきいきと学校生活を送ることが、学習意欲に大きく関係していることがわかる。保護者もポジティブに子どもと接するほうがよいと考えられる。

 小学校に入ると、幼児期に比べて子どもが家庭の外で過ごす時間は格段に長くなる。先生や友だちへの関心を、保護者が子どもと共有することも大切だ。学校と保護者の、また保護者同士の協力によって子どもの成長が実現する。

冊子「スクールダイヤモンド2016年新春号」より