〜 チョット知りたい 〜

「総合的な学習(探究)の時間」とは

学習指導要領では

 小学校には今、10年前にはなかった教科が三つある。「特別な教科 道徳」「外国語活動」「総合的な学習の時間」そして、単独の教科ではないがプログラミングも一人1台タブレット配付とともに必修化した。

 こうした教育内容の変化は、学習指導要領によって示される。学習指導要領とは、文部科学省が定める、小・中・高の各学校が教育課程(カリキュラム)を編成する際の基準で、学校教育法等の施行規則に基づいて実施されている。

 学習指導要領が最初にできたのは1958年で、以来ほぼ10年ごとに改訂されてきた。時代変化と将来予測を見すえて、学校の教育課程は連続的に常に検討されている。改訂は諮問機関の中央教育審議会の答申を受けて行われ、一部を移行措置として先行実施したうえで、全面実施という過程を経る。

「総合的な学習の時間」に関連する審議が始まった1996年の中央教育審議会第一次答申においては、 一定のまとまった時間を設けて「横断的・総合的な指導を行う」ことが提言され、1998の教育課程審議会答申では、「自ら学び自ら考える力などの『生きる力』を育む」ことを目指す改善を実現する極めて重要な役割を担うものとして「総合的な学習の時間」の創設が提言された。

 2020年4月1日から施行された学習指導要領では、「総合的な学習(探究)の時間」と明示している。横断的・総合的学習や、生きる力を付ける体験が「探究」に集約されている。

探究とは

 新しく記載された「総合的な学習(探究)の時間」の目標は、「探究的な見方・考え方を働かせ、横断的・総合的な学習を行うことを通して、よりよく課題を解決し、自己の生き方を考えていくための資質・能力を次のとおり育成することを目指す。」として、三つあげてあるので、以下に簡略化して紹介する。

・探究的な見方・考え方を働かせ、
・横断的・総合的な学習を行うことを通して課題を解決し、
・自己の生き方を考えていくための資質・能力を育成する。

 主体的、協働的、対話的、教科横断型……と実にさまざまなキーワードが詰まっている学習である。

 探究するテーマ(課題)は、社会や生活のなかから発見し、課題の設定、情報の収集、整理・分析、まとめ・表現(発表)という過程を踏んで探究の学習を進める。

 この方針を踏まえて、それぞれの学校が、地域の歴史や地勢、産業などの特色も取り入れつつ、学年に応じた学習計画を立てて実践することが求められている。小学校では自分や家族の体験から課題を得て探求することにより、社会的関心に広げることも期待される。

 文科省は3年生以上の教科としているが、私立小学校では、幼稚園児や1年生のころは、知りたいこと、おもしろいこと、何だろうと不思議に思うこと……そう感じた時から探究が始まると捉えている。何が問題かに気付き、知恵をめぐらせ工夫をして解決を得る経験。それを踏まえて、学年が上がるに連れて自主的に探究テーマを発見し、英語やプログラミングやICTのスキルを活かして探究が進む。他教科との連携や友だちや先生との協働も増える。

 一つの課題の探究のプロセス〈課題の発見ー情報収集ー整理・分析ーまとめ・発表〉を行い、発表を聴いた仲間と討論したり外部の人たちから助言を求めたりして、反省点を見つけることで、さらなる探究の道が見えてくる。探究の学習は、節目で振り返りながら、より高いレベルに到達する、まさに人間としての成長に重なる学びではないだろうか。

学校、地域、家庭の協働

 小学校の探究は、自分自身あるいは自分たちが直面している問題をテーマにする。地域の生活や環境の特色に関係する問題を取り上げ、学校、家庭、地域が連携・協働しながら取り組むことで、子どもも地域の一員としての自覚をもつ。

 文科省の授業時数の標準は、総合的な学習の時間=3~6年生70時間、特別活動=1年生34、2~6年生35時間と定めている。特別活動はクラブ活動、学校行事、児童会(委員会)活動を指し、総合の学習の時間の枠での実施も認められているので、二つの時数を合わせると3年生以上は年間105時間。4・5・6年生の総授業時数は1015なので、総合的な学習の時間は全体の1割を超えている。自ら体験して学ぶ探究には、家庭と地域との連携も求められる。

冊子「スクールダイヤモンド2022年春号」より