【特別インタビュー】

挫折と迷いの中で決めた道
ダンスとともに生きていく
yuribo(ダンサー・振付師)

所属するダンスチームは海外でも評価され、SNS総フォロワー数は200万人以上。アーティストのミュージックビデオの振付もこなすダンサー、yuribo。一方で、彼女はNHKの教育番組での振付アシスタントや高校生へのダンスの指導など、子ども世代の育成にも取り組んでいる。彼女自身が通った私立の小中高一貫校時代の経験も含めて、ダンスへの思いを語ってもらった。

夢見たバレリーナと挫折

 大きな意味での「ダンス」に触れたのは、クラシックバレエを習い始めた3歳のときです。はっきりとした記憶はありませんが、幼稚園のコミュニティで友達と通い出したのが最初だったと思います。どんどんのめり込んで、将来はバレリーナになることを夢見ていましたね。中学校までは地元のバレエ教室に通い、高校時代には日本の三大バレエ学校に入学、プロを目指して本格的に学びました。

 ストリートダンスとの出会いは、真剣にバレエに取り組んでいる最中でした。小学校4年生のとき、学校のダンス部でのことです。バレエとはまったく異なる動きに初めは慣れることができず、発表会では後ろの列で踊る存在でした。でも、やっていくうちにストリートダンスの面白さや身体の使い方がわかってきて、小学6年生の頃には選抜メンバーに選ばれるようになりました。中学以降もバレエをメインに取り組んでいましたが、ストリートダンスへの興味は持ち続けていました。

 プロを目指していたバレエですが、高校生になると、骨格的な問題もあって、いくら努力をしても周りの仲間と比べ身体が硬いという悩みにぶつかりました。これまで本気でバレエと向き合ってきた分、上の世界でやっていくのは難しいことは自分が一番わかります。高校卒業を機に、バレエも卒業する。私にとっては大きな決断でした。

ストリートダンスで生きる決意

 大学は都内の女子体育大学に通いました。多くの卒業生が体育教師になる大学です。その一方で、本格的にストリートダンスを学ぶことを決意し、ダンススクールに通い始めていました。そこで出会ったチームに所属することになりました。大学3年のとき、このチームが米国で行われる世界大会に出場することになり、私はまた人生の岐路に立たされました。大会に向けての練習は深夜までに及び、授業との両立が難しくなったのです。

 せっかくつかんだ大きな舞台、ここで結果を出せば、ダンスを職業とすることもできるのではないか。そういう思いが大学を卒業して教職に就くという将来よりも魅力的に感じられました。もちろん両親には反対されました。長い話し合いの結果、1年以内にダンス講師などの仕事を得られることを条件に、大学を中退することにしたんです。これでもう後がない。私はストリートダンスという道で生きていくことを決意しました。

 もし1年後にどうにもなっていなかったら、警察官や自衛官になることも考えていました。とにかく身体は動くので(笑)。でも、そうはなりませんでした。大学をやめた後に新たに結成したDākinee(ダーキニー)というチームの、アメリカのウエストコーストの文化を取り入れたダンススタイルが海外で話題となり、現在では、TikTokのフォロワー数が150万人超、YouTubeでもフォロワーが14万人以上にまでになりました。SNSへのコメントも世界中から届いています。

私立小学校で育まれた私の個性

 少し話が遡りますが、私は某私立女子大学の付属小中高に通っていました。ダンス部でストリートダンスに出会ったのもここです。それだけでも私にとっては大きな意味がありました。

 当時は他の学校を知らないわけで、当たり前のように楽しく過ごしていましたが、今考えると公立の小学校ではできなかった経験ができたのかもしれません。思い返して頭に浮かぶのは、総合学習での研究活動です。自分で選んだ自由なテーマを、1年間かけて調べ、研究し、発表するというものでした。私が研究テーマに選んだのは「ハエ」でした。ハエの生態について、観察し、本で調べ、詳しい人に聞きに行く。最後の発表会のことも、いまだによく覚えています。

 自由に自分で選んだテーマを時間をかけて突き詰める。この充実した時間もその後の自分の考え方に影響を与えたのではないかと思います。ただ、なぜテーマが「ハエ」だったのかだけは今考えても謎です(笑)。

振付師・講師としてのやりがい

 未就学児のお子さんがいる保護者の方であれば、NHK Eテレの「みいつけた!」という番組をご存じでしょうか。実は、あの番組のダンスが絡む楽曲のいくつかには、振付アシスタントという形で関わらせていただいています。簡単に言うと、ダンスの振りを決めるのが「振付師」で、実際に踊る演者の方に細かい振付のサポートを行うのが「振付アシスタント」です。教育番組では演者が幼い子役さんのケースもあり、難しいところもありますが、その上達の速さを見守ることができる喜びもあります。著名なアーティストのミュージックビデオなどの振付も携わらせていただいていますが、対子どもというのは特別ですね。

 同様に振付師/ダンス講師として、高校のダンス部の指導を行っていますが、その高校が日本テレビの朝の情報番組で行われた全国の高校生のダンス動画を競う大会で、全国上位6校に選ばれました。残念ながら優勝はできませんでしたが、生徒たちの成長を見守れたことは非常に良い経験になりました。

 振付師/ダンス講師の仕事をする中で意識しているのは、うまくいかない子の気持ちに寄り添うということです。私自身が、ダンスを始めた頃には上手にできなかったという経験を伝えることで、少しでも前向きになり、成長していく姿を見られることは、自分のダンスが評価されるのと同じかそれ以上にうれしいことです。

ダンスの楽しさに接する場所を広げたい

 ダンサー、振付、講師、それぞれに夢があります。

 ダンサーとしては、現在所属しているチームでさらに活動の場を広げていきたいです。言葉がいらないダンスは、どんな国の人にもストレートに伝えられる強みがあります。海外でも活動できたらいいなと考えています。振付師としては、自分の振付が広く使われるようになりたいですね。演者を輝かせることができる振付をつくっていきたいです。

 講師としては、実は今年度から小中高と通った母校でもダンスを教えることになりました。生徒たちには、全国大会など大きな舞台での経験をさせてあげたい気持ちもありますが、単に結果を出すだけでなく、努力した経験を通じて成長する生徒たちを支援していきたいと思います。

 将来的には自分のダンススタジオを持ちたいという夢もあります。下の世代が気軽にダンスに触れられるような環境をつくれたらと。私自身、ダンスで成長させてもらったので、一生ダンスと関わっていきたいです。

yuribo

東京都出身。幼少期からクラシックバレエを始め、HipHop、POP、JAZZとマルチフィメールダンサーとして名を馳せており、細身で小柄な身体からは想像出来ないキレのあるパワフルなダンスは様々なシーンから唯一無二の存在として注目されている。役者・振付師として舞台のシーンでも幅広く活動中。門真国際映画祭2021では監督/振付した作品である東京都立足立高等学校ダンス部「どろん」がダンス映像部門 優秀賞/審査員特別賞を受賞。JDAC 認定ダンス指導員1級。

出演 :[ Alexandoros]ツアーFinal、ゆず20th anniversary 東京ドームツアー、2017年日本シリーズ第4戦オープニングセレモニー他多数。

指導校 : 昭和女子大学附属昭和中高等学校ダンス部、郁文館中学・高校ダンス部、東京都立足立高校ダンス部、東京都立国際高等学校ダンス部

所属ダンスチーム : Dākinee / 迷彩 / Modest Crew

 

「スクールダイヤモンド2025」より

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